
ニュースで海外の事件を見るたびに、
「本当にこんなところに子どもを行かせて大丈夫なの?」
と不安になる親御さんは少なくありません。
たしかに、日本と同じ感覚で暮らせる国は、世界中を見てもほとんどありません。
一方で、
「国」
「エリア」
「学校のサポート体制」
「滞在方法」
などを冷静に選んでいけば、
リスクをできるだけ小さくしながら、
高校留学に送り出すことも十分に可能です。
このページでは、
- 未成年だからこそのリスク
- 統計データから見えてくる「命の危険」のレベル
- 日々の行動で防げるトラブル
という3つの視点から、高校留学の治安について整理していきます。
「なんとなく怖い…」という不安から一歩進んで、
ご家庭として「どこまでなら許容できるか?」を一緒に考えていきましょう。
高校留学全体の流れやリスク、安全対策も含めて整理したい方は、ぜひ、書籍『中高生の海外留学がよくわかる本』も手に取ってみてくださいね。


高校留学の治安が心配な親が、いちばん不安に思うこと
高校留学を検討しているご家庭からよく聞く不安は、だいたい次のようなものです。
- 命に関わるような事件に巻き込まれないか?
- 強盗や性犯罪など、深刻な被害に遭わないか?
- 夜の街や危険エリアに、子どもだけで出ていかないか?
- 友達の誘いで「ダメなこと」に巻き込まれないか?
- 親の目が届かない中で、何かあったとき本当に守れるのか?
どれも、「心配しすぎ」ということは決してありません。
ただ、ぼんやりと「海外=危ない」と捉えてしまうと、必要以上に怖くなってしまうのも事実です。
そこでまずは、「高校留学=未成年の海外生活」であることに着目して、どんなリスクがあるのかを整理してみましょう。
視点①:高校留学は「未成年の海外生活」であることを前提に考える
未成年だからこそ生じる3つのリスク
海外に暮らすこと自体にもリスクはありますが、「未成年であること」がリスクを高める面もあります。
ここでは代表的な3つを挙げます。
① 経験が少ないぶん、分別や判断力がまだ育ちきっていない
10代は、好奇心も行動力もたっぷりあります。
それ自体は留学の大きなメリットですが、
その一方で
- 目の前の楽しさを優先してしまう
- 「まあ大丈夫だろう」と深く考えずに行動してしまう
といった特徴もあります。
日本では問題にならなくても、
同じ行動が海外では命の危険につながるケースもゼロではありません。
「知らない街を一人でふらっと歩く」
「夜遅い時間帯に、治安を知らないエリアへ行く」
こうした行動は、日本以上に慎重さが必要になります。
② 「未成年は狙われやすい」存在でもある
未成年は、良い意味では「純粋」で素直です。
それ自体は素晴らしい感性ですが、残念ながら
- 人を簡単に信じてしまう
- 英語でのやりとりに慣れておらず、細かいニュアンスが読み取れない
という理由から、詐欺や窃盗などの軽犯罪のターゲットになりやすいのも事実です。
体力面でも大人ほどは強くありませんから、
油断をすると暴力被害に巻き込まれるリスクも高くなります。
③ 友達の誘いを断りづらく、流されやすい
留学の目的に「友達づくり」を挙げる人は多いはずです。
そのこと自体はとても良いことですが、日本人の多くは
- NOと言いづらい
- 雰囲気を壊したくなくて、つい流されてしまう
という傾向があります。
その結果、
「行ってはいけない場所」
「してはいけない行為(飲酒・喫煙・ドラッグなど)」
に誘われた時、「一度だけなら…」と応じてしまうリスクが高まります。
留学中は親の目が届かないため、自分自身でブレーキをかける必要があるのです。
「国の治安」だけでなく「本人の行動」が安全を左右する
ここまで見てきたように、治安リスクは「国の危険情報」だけで決まるものではありません。
◆同じ国・同じ街にいても
行動の仕方によって、リスクは大きく変わる
◆「危ない場所に近づかない」
「夜一人で出歩かない」など、
日常のルールをどれだけ守れるかが重要
という視点を持つことが大切です。
つまり、高校留学の治安を考えるときは、
「〇〇国は危険だからやめる」か
「安全だからOK」かという白黒ではなく、
どの程度のリスクを前提に、それをどうコントロールするか
という考え方に切り替えていく必要があります。
視点②:データで見る「高校留学と治安リスク」
次に、感覚ではなく統計データをもとに、
「命の危険」と「身近なトラブル」を分けて考えてみましょう。
「命の危険」と「身近なトラブル」を分けて考える
多くの親御さんが最初に心配するのは、やはり命に関わるような事件です。
下の表は国連薬物犯罪事務所(United Nations Office on Drugs and Crime: UNODC)が毎年発表している統計数値です。欧米英語圏で2021年に犯罪で命を落とした人数です。(人口10万人あたりの人数を示したもの)

アメリカやカナダ、イギリス、オーストラリア、ニュージーランドなど主要な英語圏の国々では、
- 日本に比べれば、確かに「犯罪で命を落とす人の割合」は高い
- ただし、それでも「10万人中数人」というレベル
という現実があります。
数値だけを見ると日本よりリスクは高いですが、
「ニュースで見るほど、
身近な人が次々被害に遭っているわけではない」
ということも、冷静に押さえておきたいポイントです。
実は身近な「交通事故リスク」との比較
わかりやすくするために、交通事故で亡くなる人の数と比較してみましょう。
下の表は2019年に国際道路交通事故データベース(IRTAD)で発表された、人口10万人あたりの交通事故による死亡者数を比較した表です。

ここで大事なのは、単に「発生件数が多い少ない」という話ではありません。
交通事故のニュースは毎日のようにニュースで流れますが、「自分の身の回りの人が毎年交通事故で亡くなっている」なんていう人は、ほぼいないと思います。
つまり、
「人口10万人あたり3人」という数は、
めったに起きないということなんです!
アメリカでの殺人件数は「人口10万人あたり6.78人」でしたね。
3人に比べると、それでも倍の数になりますが、中高生の留学は危険な地域に滞在することは基本的にありません。
決められたルールを守って普通に生活していれば、事件に巻き込まれるリスクは統計データよりも相当低いことが想像できるはずです。
ここでお伝えしたいのは、
「リスクがゼロではない=絶対にしてはいけない」という意味ではない
ということです。
リスクの大きさと頻度を冷静に理解したうえで、適切な備えをすることが大切なのです。
留学中に起こりやすいトラブルの現実
一方で、留学生が実際に巻き込まれやすいのは、
命の危険を伴う事件よりも、窃盗などの身近なトラブルです。
- 「置いておいたバッグやスマホがなくなっていた」
- 「ロッカーの中身が荒らされていた」
- 「自転車が盗まれた」
こうした 「物がなくなる」トラブルは、日本よりもずっと起きやすいのが現実です。
国際的な統計を見ても、欧米英語圏の多くの国では、窃盗の件数は日本の数倍〜10倍程度あります。
| 🇳🇿ニュージーランド | 2,947人 |
| 🇬🇧イギリス | 2,513人 |
| 🇦🇺オーストラリア | 2,445人 |
| 🇺🇸アメリカ | 1,747人 |
| 🇨🇦カナダ | 1,408人 |
| 🇯🇵日本 | 293人 |
人を直接傷つける犯罪はそこまで多くないが、
財布やスマホを狙った盗難は日常的に起きている
人を直接傷つける犯罪はそこまで多くないが、財布やスマホを狙った盗難は日常的に起きている
という現実を前提に、
持ち物の管理を徹底することが、留学生にとっては非常に重要になります。

視点③:高校留学で「安全に暮らす」ために守りたい5つのこと
ここからは、実際の留学生活で具体的に守ってほしいルールについてお伝えします。
娘エリンの高校留学でも、実際に約束している内容です。
基本行動ルールを決める
まずは、どの国・地域に留学するとしても共通する、5つの基本ルールです。
ルール1:危険エリアを事前に把握して近づかない
渡航して数ヶ月たつと、生活にも慣れて活動範囲が広がります。
そんな時こそ「治安の悪い場所」「避けるべきエリア」を知っておくことが大切です。
留学が始まったら、
できるだけ早いタイミングで
ホストファミリー、学校の先生やカウンセラーに、
次のようなことを具体的に聞いてメモしておきましょう。
◆夜は近づかない方がいい場所
◆一人で行かない方がいいエリア
◆学生がよく遊びに行くスポットの中で注意点がある場所
Googleマップなどで場所を確認し、
「ここは行かない」「この時間帯は避ける」といった自分なりのルールを作っておくことが重要です。
ルール2:夜間外出・一人での繁華街歩きをしない
日本では、塾帰りで暗くなってから一人で帰ることもあるかもしれません。
しかし、留学生活での夜間外出は基本的にNGと考えてください。
歩いて数分の場所であっても、暗くなってから一人で出歩かない
どうしても遅くなるときは、ホストファミリーや友人の保護者に車で送迎してもらう
また、昼間でも繁華街(ダウンタウンなど)に出かける場合は、「一人で歩かない」「人通りの少ない場所に入り込まない」ことを徹底しましょう。
日本の高校生は、現地の人から見ると「完全に子ども」です。
狙われやすい存在であるという自覚を忘れないことが大切です。
ルール3:ブランド品や高価な持ち物で目立たない
ブランドバッグ、高級時計、最新の高価なスマホやガジェットを見える形で持ち歩くといった行動は「お金を持っていそう」に見え、窃盗のターゲットになるリスクを一気に高めます。
オシャレを楽しむこと自体は悪いことではありませんが、
「現地の高校生と同じくらいのレベル」に合わせる
ブランド品はできるだけ日本に置いていく
といった工夫で、「目立たないけれど清潔感のあるスタイル」を目指すのがおすすめです。
ルール4:違法行為・グレーな誘いには絶対に乗らない
国によっては、
- 飲酒可能な年齢が日本より低い
- 大麻(マリファナ)が合法な地域がある
など、日本とルールが違う場合があります。
ただし、
留学生には独自のルールが設けられていることがほとんど
飲酒・喫煙、ドラッグの使用、その他の違法行為が発覚すると、強制帰国・再入国不可といった重いペナルティになることもあります。
「友達もやっているから」「一度だけなら」と軽く考えるのは絶対にNGです。
留学先での違反は、将来の進学・仕事にも影響する可能性があることを、親子でしっかり共有しておく必要があります。
ルール5:行き先と帰宅時間を必ず共有しておく
どれだけ気をつけていても、不測の事態は起こりえます。
そのときに重要なのは、
「何かあったとき、すぐに気づいてもらえる状態にしておくこと」
です。
- どこへ
- 誰と
- 何時ごろ帰る予定か
をホストファミリーに毎回必ず伝える習慣をつけましょう。
帰宅予定時間を過ぎても連絡がなければ、
ホスト側から電話やメッセージで確認してもらうなど、「音信不通のまま放置されない仕組み」をあらかじめ一緒に決めておくことが大切です。
お金とスマホの管理を徹底する
窃盗トラブルの多くは、お金とスマホまわりで起きます。
現金は必要な分だけ持ち歩き、残りはホスト宅の安全な場所に保管する。
財布・スマホ・パスポートなど「なくなると困るもの」は、カバンに入れっぱなしにせず、常に身につけておく
学校や公共の場では、机の上や椅子の上に置きっぱなしで席を離れない
といった基本を徹底しましょう。
スマホは、連絡手段であると同時に、万が一のときに助けを呼ぶための大切なツールです。
- ロックを必ずかける
- 「端末を探す」機能をオンにしておく
- 緊急連絡先を登録しておく
など、事前の設定も忘れないようにしたいですね。
SNS・人間関係のトラブルを防ぐ
近年増えているのが、SNSや人間関係をきっかけとしたトラブルです。
- 自宅や学校、普段の行動範囲が分かるような投稿をしない
- 場所情報(位置情報)を常にオンにしない
- 会ったばかりの人に、個人情報を簡単に教えない
など、「安全の基本ルール」を親子であらかじめ話し合っておくことをおすすめします。
ホストファミリーや学校と情報を共有する
留学先で頼れる大人は、ホストファミリー、学校の先生・カウンセラー、現地のコーディネーターやエージェントといった人たちです。
大切なのは、「困ったこと・気になることを、早めに共有する姿勢」を持つことです。
- 学校でのいじめやトラブル
- 友達からのしつこい誘い
- 自分でも説明しづらい不安やモヤモヤ
など、親には言いづらいことでも、ホストや学校の大人のほうが相談しやすいケースもあります。
「何かあったら、すぐ相談していいんだよ」というメッセージを、日本にいる間からしっかり伝えておいてあげてください。
事前に親子で「価値観」と「ルール」をすり合わせておく
安全対策は、
「子どもに全部任せる」か
「親が細かく決めて押しつける」か、
どちらか一方になってしまうとうまくいきません。
- どこまでを許容できるのか
- 何は絶対にNGなのか
- 困った時に、誰にどう相談するのか
といった価値観とルールを、
出発前に親子でしっかり話し合っておくことが何より大切です。
このプロセスは、そのまま「自分の身を守る力」「自分で判断する力」を育てることにもつながります。
それでも不安なときにできること:情報収集と準備のステップ
「ここまで読んでも、
やっぱり不安はゼロにならない…」
という親御さんも多いと思います。
そんなときにできることを、情報収集と準備の面から整理してみましょう。
信頼できる公的情報で「国・地域の治安」を確認する
治安について調べるときは、まず公的な情報源から確認するのがおすすめです。
- 外務省「海外安全ホームページ」
(国・地域ごとの危険情報や安全対策基礎データ)
- 外務省「海外留学/海外修学旅行」
(留学前に知っておきたい安全のポイント)
こうした公的情報をベースにした上で、エージェントや留学経験者の話を補足情報として聞くと、
偏りの少ない判断がしやすくなります。
もちろん、留学パパにLINE@の無料相談で直接聞いてもらうのもウェルカムです!
「安全に暮らす力」を育てる準備をする
治安の不安を減らすためには、事前の準備と「心構えづくり」もとても大切です。
◆留学や海外生活の全体像を知るために、親子で一緒に本やブログ記事を読む
◆トラブル事例やその乗り越え方を知っておく
◆具体的なシミュレーション(「もし〇〇だったらどうする?」)をしてみる
など、「知る→考える→話し合う」というステップを踏むことで、安全に暮らす力は少しずつ育っていきます。
留学パパの書籍「中高生の海外留学がよくわかる本」もぜひ手に取ってくださいね。

一人で抱え込まないための相談先を持っておく
最後に、「一人で抱え込まないための相談先」を、親子それぞれが持っておくことも大切です。
- 学校や自治体の留学相談窓口
- 信頼できる留学エージェント
- 留学経験者のコミュニティ など
そしてもちろん、
「とりあえず誰かに聞いてみたい」
という段階で相談できる窓口があると、不安はぐっと軽くなります。

まとめ:治安の不安とどう付き合うか
高校留学には、確かにリスクがあります。
「日本と同じように安心・安全」と言い切ることはできません。
けれども、
リスクの中身と大きさを正しく理解し、
日常の中でできる行動ルールを決めて、
公的情報や専門家の力も借りながら準備を進めていけば、
「必要以上に恐れる必要はない」
とも言えます。大切なのは、
悲観しすぎず、楽観しすぎず、
冷静に情報を集めながら、
親子で納得いく形を選ぶこと
今回お伝えした内容が、高校留学の治安について「ちゃんと考えてみる」ための、
ひとつの材料になれば嬉しいです。





