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ニュージーランドの高校留学は、「ハードルが低くチャレンジしやすい国」としてよく紹介されます。
日本での成績や出席日数、英語力に不安があっても、受け入れてくれる学校が比較的多く、年齢とともに学年が上がっていくため、「単位が取りきれなくても修了できる」という特徴もあります。
ただし――。
高校留学はあくまで「通過点」であって、「ゴール」ではありません。
その先の進路(大学進学や就職)によっては、「ニュージーランドの高校を修了した」という事実だけでは、希望する道に進めないケースもあります。
ここで鍵になるのが、
ニュージーランドの高校で取得できる国家資格 NCEA(National Certificate of Educational Achievement)
です。
この記事では、
- NCEAとはどんな国家資格なのか
- どんな仕組みで評価・認定されるのか
- どんな進路でどこまで必要になるのか
- NCEA取得を目指すなら、留学前に何を準備しておくと安心か
を、初めてNCEAという言葉を聞いた方にも分かるように解説していきます。
《関連動画》
そもそもニュージーランドには「卒業」という考え方がないって本当?
NCEAの話に入る前に、まずは「日本との大きな違い」から。
実は、ニュージーランドには、日本のような「高校卒業」という概念がありません。
イギリスも同じで、「高校を卒業する」というよりは、ある学年まで学び終えたことが“修了”として扱われるイメージです。
もちろん、修了証が発行されたり、卒業式のようなイベントが行われる学校も多くあります。
ただ、日本やカナダ、アメリカのような「卒業証書」という形では残らないのが大きな違いです。
ここで多くの方が気になりますよね。
「卒業証書がなくて、大学受験のときに困らないの?」
そこで登場するのが、NCEA という国家資格です。
高校でどんな内容を、どれくらいのレベルで学んだのかを示す「全国共通のものさし」として、NCEAが重要な役割を果たしています。
ニュージーランドの学年制度や単位・修了の考え方については、こちらの記事もあわせて参考にしてください
▶︎ニュージーランド高校留学の教育制度ガイド|学年制度・学期(Term)・入学時期・単位と卒業のしくみ
NCEAとは?「人の努力を見逃さない」評価基準を持つ国家資格
学校での評価と言われて、まず思い浮かぶのは「テストの点数」かもしれません。
決められた時間内で、覚えたことをどれだけ正確にアウトプットできるかを測る、いわゆる「一発勝負」の世界です。
日本の受験でも、テストの点数や偏差値、出身校などが重視されてきましたが、
・当日の体調やメンタルに大きく左右される
・日頃の積み重ねや、コツコツした努力が見えにくい
という、どうしても「もったいない」部分もありますよね。
ニュージーランドの NCEA は、そこを埋めるための仕組みだと言ってもいいかもしれません。
NCEAとは、高校で学ぶ内容を細かい「Standard(学習項目)」ごとに区切り、
年に一度の全国統一試験(External)と、日頃の課題やテスト(Internal)の両方で多面的に学びと努力を評価する国家資格制度です。
そして、NCEAはニュージーランド国内の大学や専門学校の入学条件として使われるだけでなく、海外大学への出願や、就職の際の学歴・能力証明としても活用されている、全国的に認められた資格です。
「国家資格=難しそう…」と感じる方もいると思いますが、裏を返せば
「自分の努力がきちんと評価される」「学校や先生による“差”が出にくいように、国が基準を整えている」
という意味でもあります。
実際、「NCEAの仕組みに惹かれて、ニュージーランド高校留学を選ぶ」という生徒もいるくらいです。
これだけは押さえたい!NCEAの基礎知識3つ
ここからは、NCEAの全体像をつかむための「最低限これだけ覚えておけばOK」というポイントを3つに絞ってお話しします。
NCEAの基礎知識① Level1〜3とクレジット(単位)の考え方
日本の高校1〜3年生にあたるのが、ニュージーランドでは Year 11〜13 です。
この3年間で、基本的には次のようにNCEAを取得していきます。
Year11を終える前にNCEA Level 1を取得
Year 12を終える前にNCEA Level 2を取得
Year 13を終える前にNCEA Level 3を取得
それぞれのレベルを「修了した」とみなされるためには、80クレジット(単位) を集める必要があります。
1つの科目の中には、さらに細かい「Standard(学習項目)」がいくつもあり、Standardごとに「何クレジット」という形で単位が設定されています。
例:英語(English)の中にあるStandard
- Produce creative writing
- Produce formal writing
- Create a visual text など

こういったStandardを1つ学び終えるごとに、決められたクレジット数(例:3クレジット)が付与され、
1年の終わりに「合計で何クレジット取れたか」が集計されます。

そして、NCEAでは 「必修のStandard」 も決められています。
例えば、Level 1では、
✅Literacy(英語)で 10クレジット以上
✅Numeracy(数学)で 10クレジット以上

さらに、Level 2・3では、必要なLevel以上のStandardを中心に60クレジット以上が必要です。

細かいルールは色々ありますが、「1つのLevelごとに80クレジットが必要」「英語・数学の必修クレジットがある」というイメージが持てていれば、現段階では十分です。
「細かい部分を知りたい」という人は、ぜひ公式HPで記載されている内容を熟読してもらうのが良いと思いますので、一応、リンクを貼っておきますね。
(※英語の勉強にもなりますよ!)
NCEAの基礎知識② External/Internalと4段階評価
NCEAのクレジットは、大きく2つの評価を通して与えられます。
External Assessment(外部評価)
年に一度行われる全国統一試験。ペーパーテストだけでなく、科目によっては作品提出などが評価対象になることもあります。
Internal Assessment(内部評価)
学校で出される課題・小テスト・発表など。先生が自由に作問しているわけではなく、国の厳しい基準にもとづいて実施されます。
どちらも、次の4段階評価で判定されます。
「E」 = Excellence 「優良」
「M」 = Merit 「良」
「A」 = Achieved 「可(及第点)」
「N」 = Not Achieved 「不可(落第)」
クレジットとして認められるのは、A以上 を取った場合です。
Nが続いてしまうと、必要なクレジットが足りず、Levelを修了できない可能性が出てきます。
「日頃の積み重ね(Internal)」と「全国共通の基準(External)」の両方で評価してくれる点が、NCEAの大きな特徴と言えます。
NCEAの基礎知識③ 単位を落としたときのリスクとカバー方法
「もし単位(クレジット)を落としたらどうなるの?」
ここも、よくある質問です。
External(全国統一試験)でNot Achievedだった場合→ 基本的には翌年に再チャレンジ となります
Internal(学校での課題・テスト)で不合格だった場合→ 科目や先生の判断によっては、1回だけ再チャレンジのチャンスがもらえることもあります。
ただ、3年間でLevel 1〜3をすべて取り切るには、それぞれの年で80クレジットを集める必要があります。
1つ落とすと、その分どこかで取り返さなければいけません。
そこで、現地の生徒たちがよく使うのが、
「最初から80クレジット以上を見込んでStandardを取っておく」
という作戦です。
例えば、90〜100クレジット分のStandardを履修しておけば、いくつかNot Achievedが出ても、トータル80クレジットに届く可能性が高くなります。
その分、勉強量や課題は増えるので簡単ではありませんが、計画的にクレジットを取りに行くことが大事だというイメージは、持っておくと良いと思います。
NCEAはどこまで必要?進路別チェックポイント
では、このNCEAは「どの進路で、どこまで必要になる」のか。代表的なパターンごとに整理しておきます。
ニュージーランドの大学・専門学校を目指す場合
ニュージーランド国内の大学や多くの専門学校では、
NCEA Level 3 を修了していること
指定された科目・クレジットを一定以上取っていること(UE:University Entrance など)
が基本的な条件になります。
特にニュージーランドには大学が8つ(すべて国立)しかありません。
限られた枠に、一定以上の学力・言語力を持つ学生を送り出すためにも、
「単位を取らずに、年齢だけで学年を上げてきた生徒」より、「NCEAでしっかりクレジットを取り、Level 3まで修了している生徒」が優先されるのは当然と言えるかもしれません。
ニュージーランドの大学進学を視野に入れているなら、NCEA Level 3の取得は“最低条件” と考えておいた方が安心です。
イギリス・オーストラリアなど海外大学を視野に入れる場合
ニュージーランド以外の英語圏の大学(イギリス・オーストラリアなど)でも、NCEAは「その国の高校卒業資格と同じようなもの」として扱われることが多く、出願書類の1つとして提出を求められるケースがあります。
- 「どのレベルの科目を、どれくらいの評価で修了しているか」
- 「志望分野に関連する科目をしっかり取っているか」
などを、NCEAの履修状況を見ながら判断されるイメージです。
海外大学進学を本気で考えるほど、NCEAの重要度は上がる
と考えておくと良いと思います。
日本の大学(帰国生入試など)を考えている場合
では、日本の大学に戻ってくる場合はどうでしょうか。
現時点では、
NCEAを持っていなくても受験できる大学・学部はまだ多い
一方で、NCEAの取得を条件の1つとして挙げている大学も、少しずつ増えている
という状況です。
特に、海外の高校を修了した学生や外国人留学生を積極的に受け入れている大学ほど、
- NCEAを含む高校の成績証明
- TOEFL/IELTSなどの英語スコア
- 小論文やエッセイ
などを組み合わせて総合的に評価するケースが増えています。
大切なのは、「数年前の情報」ではなく、自分が受験する年度の募集要項を必ず確認すること。
帰国生入試を使うのか、一般入試に近い形なのか、総合型選抜なのかによっても、求められる条件は変わってきます。
将来の選択肢を狭めたくないのであれば、可能な範囲でNCEAにチャレンジしておく ことをおすすめします。
NCEA取得を目指すなら、留学前に準備しておきたいこと
ここまで読むと、
「うちの子にはNCEAが必要そうだな」
「まだ迷っているけれど、選択肢は広げておきたい」
と感じた方も多いと思います。
最後に、NCEA取得を視野に入れてニュージーランド高校留学を考えるとき、日本にいる間から準備しておくと良いポイントを3つにまとめます。
① 英語力と「学び方」の土台づくり
NCEAでは、単にテストの点数だけでなく、
- 日頃の課題への取り組み方
- レポートやエッセイの書き方
- プレゼン・作品などのアウトプット
も含めて評価されます。
つまり、
必要なのは、「教科書の内容を覚える力」だけでなく、自分の頭で考え、表現し、自分のペースで学び続ける力」
です。
ニュージーランド渡航前から、英語の基礎力や自分で考えて学ぶ習慣を整えておくことで、現地でのNCEA学習がぐっとスムーズになります。
「留学前から、オンラインで“学び方”を整えておきたい」という方には、高校留学準備レッスン SLEEKも参考になると思います。
② 「なぜNCEAを取るのか?」目的を言葉にしておく
NCEAは、全員が「絶対にLevel 3まで取らないといけないもの」ではありません。
- 1年だけ体験的に留学するのか
- ニュージーランドで高校を修了したいのか
- 現地の大学まで進学したいのか
- 日本に戻って、帰国生入試などで大学を受験したいのか
によって、NCEAの“重さ”は変わってきます。
「なぜニュージーランドで学びたいのか」
「高校留学のあと、どんな未来を選びたいのか」
を、親子でゆっくり話しながら整理しておくと、「うちの場合はNCEAをどこまで目指すのか?」が見えやすくなります。
高校留学全体の考え方や、国選び・費用・安全面なども含めて整理したい方は、拙著『中高生の海外留学ー知るたび、自分と未来が広がる本』も、目的を考えるヒントとして役立つと思います。
③ 自分のケースをプロに相談してみる
「成績や出席状況に不安がある」
「途中で不登校になってしまった時期がある」
「家計的にどこまで留学費用をかけられるか分からない」
「NCEAをどこまで目指すべきかイメージできない」
こういった点は、インターネットの情報だけでは判断が難しい部分でもあります。
同じ「ニュージーランド高校留学」でも、一人ひとりの背景や希望によって、最適なプランはまったく変わってきます。
迷ったときは、早い段階で留学パパのLINE@無料相談にメッセージください。

「NCEAを必ず取るべきか?」に限らず、「そもそも高校留学そのものをどう考えるか」という部分から一緒に整理していきましょう。
NCEAを理解して、自分に合ったニュージーランド高校留学を選ぼう
ここまで、ニュージーランドの高校で取得できる国家資格 NCEA についてお話してきました。
- ニュージーランドには日本のような「高校卒業証書」はなく、その代わりにNCEAが学力や努力の証明として使われていること
- NCEAはLevel 1〜3とクレジット制度、External/Internal評価、4段階評価などから成り立っていること
- ニュージーランドの大学・海外大学・日本の大学、それぞれでNCEAの必要性が違うこと
- NCEA取得には、学力だけでなく、計画性や日々の積み重ねが大切になること
高校留学の目的は、人によって本当にさまざまです。
「とにかく英語が話せるようになりたい」
「自分の殻を破りたい」
「将来は海外の大学で専門分野を学びたい」
どの気持ちも、どれが正解・不正解というものではありません。
大切なのは、
「自分はなぜニュージーランドで学びたいのか?」
「NCEAを取ることで、どんな未来の選択肢を増やしたいのか?」
を、自分の言葉で少しずつ言語化していくことだと思います。
ニュージーランド高校留学を、「なんとなく憧れだから」ではなく、「自分なりの納得」で選べるようになるために。
ここから一緒に、少しずつ具体的なプランを考えていきましょう。

