この記事を書いた「留学パパ」はこんな人です。

海外の高校を卒業する留学って、どんなもの?
1年の留学と、何が違うの?
日本の大学には行けるの?
費用はどのくらいかかるの?
「卒業留学」「正規留学」という言葉は聞いたことがあっても、くわしく知っている人は多くありません。
実は、以前の僕もそうでした。
「高校までは日本で。行きたければ、大学から留学すればいい」。
そのくらいに考えていたんです。
でも、娘のエリンの留学を応援すると決めて調べていくうちに、考えが大きく変わりました。
結論を先に言いますね。
卒業留学は、10代のうちに「英語で学び、自分で選ぶ」経験を、2〜3年かけて積み重ねられる留学です。費用も覚悟も必要ですが、そのぶん、進路の選択肢も、自分の生き方の「軸」も、大きく広がります。
ただし、「絶対に行くべき」という話ではありません。
メリットだけでなく、デメリットも正直にお伝えします。
卒業留学(正規留学)とは?1年の留学との違い
卒業留学とは、海外の高校に入学(編入)して、現地の高校を卒業するまで通う留学のことです。
「正規留学」とも呼ばれます。
1年の留学と比べると、違いがよく分かります。
1年の留学
日本の高校に戻る
日本の高校に在籍したまま(または休学して)
留学し、帰国後は日本の高校を卒業します。
1年は、ちょうど「英語で学ぶ」段階に入る頃です。
卒業留学
海外の高校を卒業する
2〜3年かけて現地の高校を卒業します。
英語は当たり前になり、「自分は何を大切に生きるのか」を考える段階まで進みます。
いつから行ける?
卒業留学を始めるタイミングは、主に3つです。
① 中学を卒業してすぐ
日本の高校に入らずに、海外の高校に入学します。
準備の時間がいちばん取りやすく、3年間かけて卒業を目指せます。
② 高1の途中から
日本の高校をやめて、海外の高校に編入します。
学年の区切りや、編入できる時期に注意が必要です。
③ 高2から
2年間で卒業を目指します。
単位の取り方や、卒業までの期間を早めに確認する必要があります。
学区や国によっては、卒業する時点の年齢に上限があります(たとえば「20歳未満」など)。
行く前に、卒業までの道のりを確かめておきましょう。
もう一つ大事なのが、日本の高校をやめる場合の扱いです。
全日制の高校を途中でやめると、海外の高校を卒業するまでは、最終学歴が「中学校卒業」になります。
そのため、通信制高校に移って在籍を続けながら準備する人もいます。
費用はどのくらい?
卒業留学の費用は、1年の費用がおおむね年数分かかると考えてください。
約334万〜557万円
カナダ・ニュージーランドの公立高校に1年通う場合の目安(航空券・保険を除く)
2〜3年の卒業留学なら、これがおおむね2〜3年分になります。
どの国・どの州・どの学区を選ぶかで、年間100万円以上の差が出ることもあります。
卒業留学の3つのメリット
メリット① 大学進学の選択肢が広がる
海外の高校を卒業すると、「高校卒業」の資格という意味では、日本の高校を卒業したのと同じです。
そのうえで、大学への入り方が広がります。
日本の大学へ
総合型選抜・帰国生入試など
書類・面接・小論文で「何を考え、何をしてきたか」を見る入り方と、留学の経験はとても相性がいいです。
海外の大学へ
英語で学ぶ準備ができている
2〜3年、英語で授業を受け、レポートやプレゼンに慣れているので、大学に入ってからの負担がずっと小さくなります。
とくに伝えたいのは、総合型選抜(旧AO入試)です。
今は、日本の大学入学者の半数以上(51.4%、2023年度)が、総合型選抜か学校推薦型選抜で入学しています(文部科学省の調査をもとにしたベネッセ教育総合研究所のまとめ)。
総合型選抜で見られるのは、テストの点数だけではありません。
「何に関心を持ち、何をしてきて、大学で何を学びたいか」です。
海外の高校で、言葉の壁にぶつかりながら学び、卒業までやり切った経験は、まさにこの入り方でいちばん生きる経験です。
ただし、「留学しました」「英語が話せます」だけでは評価されません。
なぜその国を選び、現地で何に困り、どう向き合ったのか。
それを、自分の言葉で語れるかどうかが見られます。
帰国生入試は、大学ごとに条件がまったく違う
海外の高校を卒業した人が受けられる入試に、「帰国生入試(帰国子女入試)」があります。
ただし、出願の条件は大学や学部ごとにまったく違い、毎年のように変わります。
よく見られる条件は、次の3つです。
1 海外の高校に、何年在籍したか(「最終学年を含めて2年以上」などが多い)
2 保護者の海外勤務に伴う留学かどうか(親が日本にいて子どもだけが留学する場合は、出願できない大学もある)
3 英語の外部試験のスコアなど
「帰国生入試があるから大丈夫」と思い込まないでください。志望する大学が決まったら、必ずその年度の募集要項で、出願できるかどうかを確かめてください。
「うちの子の条件で、どの大学に出願できるのか」「どの入り方を目指すのがいいのか」も、LINEやカウンセリングで一緒に整理できます。
帰国生入試が使えなくても、総合型選抜や海外の大学など、留学の経験を生かせる道はたくさんあります。
僕のこれまでの相談の経験からの推計ですが、3か月以上の高校留学をした人の約8割は、日本の大学に進学しています(公的な統計ではありません)。
メリット② 「世界基準」の学び方が、2〜3年かけて身につく
海外の高校では、授業のスタイルそのものが違います。
日本の学び方
正解を覚える
空気を読んで、波風を立てない。
テストの点数と順位で評価されることが多い。
海外の学び方
自分の意見をつくる
意見を理由とセットで伝え、違う価値観の人と対等に話し合う。
成長や取り組みの姿勢も評価される。
料理、アート、心理学、プログラミング。
選択科目がとても多く、興味のあることを「試してから決める」ことができます。
1年だと、この学び方に慣れてきたところで帰国になります。
卒業留学なら、それを2〜3年かけて、自分のものにできるんです。
メリット③ 英語が「当たり前」になり、やり切った経験が残る
10代は、言葉を吸収する力がとても柔らかい時期です。
授業も、友達との会話も、成績の評価も、すべて英語という毎日を2〜3年続けると、英語は「勉強するもの」から「当たり前に使うもの」に変わります。
そして、もう一つ大きいのが、「未成年で親元を離れ、言葉の壁を越えて、卒業までやり切った」という経験です。
これは、大学進学でも、その先の仕事でも、自分の言葉で語れる大きな財産になります。
留学ママが見た、卒業したあとのエリン
「卒業までやり切った経験」は、そのあと、どんなふうに残るのか。
一番近くで見てきた妻(留学ママ)が、エリンとの母娘対談で、2つの場面を話してくれました。
1 京都の靴屋さんで
母と娘で京都を旅行していた、雨の日のことです。
靴屋さんで、海外から来た4人ほどのグループが、雨よけの靴カバーを買おうとしていました。
でも、店員さんとのやりとりが、どうもかみ合いません。
そこにエリンがすっと入って、通訳を始めたそうです。
「あれ、いないなと思ったら、『Do you need help?』って話しかけてるの」
(留学ママ(エリンとの母娘対談より))
留学ママによると、京都だけの話ではありません。
どこに出かけても、困っている人がいると、エリンは自分から話しかけているそうです。
留学する前のエリンには、初めて会う人に話しかける勇気は、まったくありませんでした。
中学1年生のころは、「日本に住んでたら英語なんて使わないから、日本語だけでいいじゃん」と言っていた子です(笑)
「他人って、そんなに気にしてないよね。逆に、困ってるなら助けを求めてほしいじゃん、みんな」
(エリン(留学ママとの母娘対談より))
英語が話せるようになった、だけではありません。
目の前の人を、自然に助けられる人になっていたんです。
2 卒業から1年後の、母校で
エリンの3年間の留学中、僕も留学ママも、一度もカナダに行っていません。
コロナ禍もあって、卒業式にも出られませんでした。
卒業から1年後、現地視察で、僕と留学ママとエリンの3人で、エリンが通っていた高校を訪ねました。
料理の先生たちが食事を用意して、テーブルまできちんとセッティングして、迎えてくれたそうです。
ところが、エリンがなかなか席に戻ってきません。
少し歩くと、テーブルの人から「エリン!」と声をかけられて話し込む。
また少し歩くと、別のテーブルで声をかけられる。
「先生だけじゃなくて、友達や後輩、みんなに愛されてたんだなと思って」
(留学ママ(エリンとの母娘対談より))
2〜3年かけて、その学校の一員になる。
卒業留学で残るのは、英語や卒業証書だけではありません。
その場所で築いた、人とのつながりです。
この母娘対談の様子は、動画でも見られます。
実は、卒業留学のデメリットは「強み」に変わる
1年の留学とは違う、卒業留学ならではのデメリットもあります。
よく挙がるのは、この3つです。
① デメリット 日本の高校をやめる(帰る場所がなくなる)
▼ 裏返すと
価値 帰る場所を残さないからこそ、覚悟が決まり、現地の生活に飛び込めます。
日本の高校をやめると、海外の高校を卒業するまでは、最終学歴が「中学校卒業」になります。
不安を感じるのは当然です。
だからこそ、通信制高校に籍を置くなど、出発前に「もしも」の道を親子で決めておきましょう。
② デメリット 2〜3年分の費用と時間がかかる
▼ 裏返すと
価値 1年の留学では届かないところまで行けます。
費用は、1年の費用のおおむね年数分。
決して小さくありません。
でも、英語が「当たり前」になり、その英語で専門的な科目を学び、卒業後の進路を自分で選ぶ。
ここまで到達できるのは、卒業留学だからこそです。
③ デメリット 日本語の力にブランクができる
▼ 裏返すと
価値 2つの言葉と文化を行き来できる人になれます。
漢字や敬語、日本語で文章を書く力からは、どうしても離れます。
帰国後に日本の大学を目指すなら、小論文や志望理由書の準備は早めに始めましょう。
でも、その準備は、留学で考えたことを自分の言葉にする作業そのものです。
どれも、本当にあることです。
でも、その困難を越えた経験こそが、卒業留学の価値なんですね。
卒業は、ゴールではなく「通過点」
最後に、エリンの話をさせてください。
エリンは、カナダの高校を3年間で卒業しました。
カナダの大学からも合格をもらいました。
でも、エリンは大学に進みませんでした。
“
お金や時間を使ってまで、大学で学びたいものが、今はない。
― エリン(カナダの高校を卒業したとき)
年に約400万円もかかる大学に、「なんとなく」で行くことはできない、と考えたんです。
エリンは高校で、40歳で大学に戻った料理の先生から、こう教わっていました。
「やりたいことが見つかった時が、大学に行く時」
卒業後、エリンはカナダでギャップイヤーを取り、カフェで働きました。
「学校の外の人から学んだことが、留学で学んだこと以上に大きかった」と言います。
そして19歳で、自分の会社を立ち上げました。
エリンの選択が正解だ、と言いたいわけではありません。
大学に進む子もいれば、働く子もいます。
大切なのは、卒業したあとの道を、自分で選べる力が身についていることです。
学校は「目的地」ではなく「通過点」。
卒業留学は、その先の人生を自分で選ぶための、2〜3年間なんです。
卒業留学を考えるときに、親子で話してほしい3つの問い
1 なぜ、日本の高校ではなく、海外の高校を卒業したいの?
2 2〜3年のあいだに、何を経験してみたい?
3 卒業したあと、どんな道を選べる自分になっていたい?
答えは、すぐに出なくて大丈夫です。
話し合うこと自体が、卒業留学の準備になります。
まとめ:卒業留学は「先の人生を自分で選ぶ」ための留学
- 卒業留学(正規留学)は、海外の高校を卒業するまで通う留学。中学卒業後・高1・高2から始められる
- 費用は、1年の費用(約334万〜557万円)がおおむね年数分かかる
- 大学進学の道は広がる。とくに総合型選抜では、留学の経験がいちばん生きる
- 帰国生入試は、大学ごとに条件が違う。必ずその年度の募集要項で確かめる
- デメリットはあるが、越えた経験こそが価値になる。卒業はゴールではなく通過点
最後に、一つだけ聞かせてください。
「あなたは、海外の高校を卒業したあと、どんな道を選びたい?」
「うちの子に卒業留学は合っている?」
「1年にするか、卒業までにするか迷っている」。
そんなときは、一人で悩まずに気軽に相談してください。
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