短期留学で十分?「とりあえず短期で」の前に知りたい、短期と正規留学の本当の違い

短期留学で十分?カナダの高校の卒業式でホストマザーと抱き合う日本人留学生

この記事を書いた「留学パパ」はこんな人です。

留学パパとはこんな人

費用も高いし、まずは夏休みの短期留学から。

とりあえず短期で、雰囲気だけでも掴んでくれたら…

最近、相談でこの言葉を本当によく聞くようになりました。

円安も物価高も続いていますし、いきなり何年も海外に出すのは、勇気がいりますよね。

この夏も、中高生向けの短期プログラムの参加者が1,000名を超えた会社がありました。

「まずは短期から」は、今いちばん選ばれている形なんです。

でも、ひとつだけ立ち止まって考えてみてほしいんです。

短期留学をもっと長くしたものが、正規留学なのでしょうか?

先に、結論をお伝えしますね。

短期留学と正規留学は、「長さ」が違うのではなく、「現地での立場」が違う、別の種類の経験です。

短期は、学びに向かう「スイッチ」を入れる場所。
正規留学は、逃げ道のない場所で、英語を使って学び、暮らしをやり切る場所。

どちらが上ということはありません。
大切なのは「とりあえず」で選ばずに、お子さんが何を持ち帰りたいかで選ぶことです。

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なぜ今、「まずは短期から」が増えているのか

いちばんの理由は、やはりお金です。

何年もの留学になると、数百万円から1,000万円を超えることもあります。

でも、理由はそれだけではありません。

「みんなと同じタイミングで卒業して、日本の大学に進みたい」

「留年したら、そのあとの進路はどうなるんだろう…」

日本の中高生と親御さんと話していると、この「今の道から外れたくない」という気持ちが、とても強いのを感じます。

夏休みの短期なら、学校の勉強にも部活にも、ほとんど影響がありません。

SNSで見る「楽しい海外体験」のイメージもあって、短期が「安心できる自己投資」として選ばれるのは、とても自然なことなんです。

ちなみに、文部科学省の調査(令和5年度)では、3か月未満の研修旅行に行った高校生は31,711人、3か月以上の留学は3,174人でした。

高校生の挑戦のほとんどは、すでに「短期」から始まっているんですね。

短期と正規は、「長さ」ではなく「立場」が違う

ここで、言葉を一つだけ整理させてください。

短期留学

数週間でも、半年でも、1年でも。

「期間を決めて、体験しに行く」留学はすべてここに入ります。

英語力や成績を、ほとんど問われずに参加できるものが多いです。

正規留学

現地の中学や高校に籍を置き、2〜3年かけてその学校を卒業することを目指す留学です。

「じゃあ、正規留学は1年留学を長くしたようなもの?」と思われがちですが、そうではありません。

違いを一言で言うと、「単位を取る必要があるかどうか」です。

短期は「経験すること」が目的なので、授業でも課外活動でも、成績は基本的に求められません(日本の在籍校の条件によっては求められることもあります)。

一方、正規留学では、どの科目も最低限の評価(一般には「C評価以上」)を取って、初めて単位になります。

その単位が、卒業に必要なんですね。

だから正規留学では、「英語を伸ばす」は目的ではなく、結果になります。

少し厳しく言えば、英語は使えて当たり前。

「英語を使って、何を学ぶか」がいちばんの目的になるんです。

短期留学で手に入るもの:学びに向かう「スイッチ」

では、短期留学には意味がないのか。

僕は、まったくそうは思っていません。

短期留学の間、子どもたちは現地で「歓迎されるお客さん」です。

留学生向けのやさしい授業やアクティビティに参加して、たいていは楽しいまま帰ってきます。

そこで手に入るのは、こんな気持ちです。

通じた!

もっと言いたいことがあったのに…

つたない英語でも自分の言葉が通じたうれしさと、伝えきれなかった悔しさ。

この気持ちの揺れが、帰ってからの勉強に向かう、強いエネルギーになります。

うまく話せなかった悔しさの方が、帰国後の頑張りにつながることも少なくありません。

実際に、短期留学をきっかけに自分から猛勉強を始めて、総合型選抜などで日本の難関大学に合格していく子を、僕はたくさん見てきました。

ただし、知っておいてほしいこと

正直に言うと、数週間で英語力そのものは、ほとんど伸びません。

もうひとつ、短期のプログラムは、日本人の生徒がまとまって同じ学校に参加する形が多いです。

気心の知れた日本人の友達とはすぐ打ち解けられるので、休み時間や放課後をそちらで過ごしてしまい、英語を使う時間そのものが減ってしまうこともあります。

海外で暮らすと、気持ちには「波」があります。

最初はワクワクしていて、数週間から数か月たつと、言葉の壁や孤独がつらくなってくる。

短期留学は、多くの場合、この波がいちばん穏やかなうちに帰ってくる経験なんですね。

だから「楽しかった、また行きたい」と前向きに帰ってこられます。

その代わり、波の「谷」を自分の力で乗り越える経験までは、なかなか届きません。

短期留学は、英語を完成させる場所ではなく、
「もっと学びたい」に火をつける場所。

正規留学でしか手に入らないもの:「我慢すればいい」が通じない場所

短期留学なら、ホストファミリーと少し合わなくても、友達がなかなかできなくても、数週間から長くて1年、我慢すれば終わりです。

合わないと感じても、逃げ切ることができてしまいます。

でも正規留学は、同じ家で2〜3年、同じ学校で何年も過ごします。

毎日の食卓も、毎日の教室も、簡単には変えられません。

最初の数か月が過ぎれば、「お客さん」扱いも終わります。

現地の生徒と同じように、数学や歴史の授業を受けて、課題を出して、評価をもらう。

言葉が通じない劣等感や孤独と、正面から向き合うことになります。

娘のエリンに、1年たつ頃に起きたこと

娘のエリンは、カナダの高校に3年間通って卒業しました。

留学する前の英語力は、聞く力も、話す力も、単語力も、いわゆる「普通の中学生レベル」でした。

でも、留学生活が1年を迎える頃、「何か」が変わったんです。

明らかに言葉が聞き取れるようになって、たとえ間違っていても気にせず、自分のことを表現できるようになっていました。

3年間で、エリンは何度も泣きました。

それでも、「日本に帰りたい」とは一度も言いませんでした。

逃げ道のない場所で、波の谷を何度も自分で越えた経験。

それが、「どこに行っても、自分ならなんとかやっていける」という、腹の底からの自信になっていきます。

正規留学は、英語を学びに行く場所ではなく、
英語で学び、暮らしをやり切る場所。

もちろん、正規留学にもリスクはあります。

「行けばなんとかなる」という憧れだけで、準備も覚悟も足りないまま出発すると、途中で心が折れてしまうこともあります。

だからこそ、慎重な見極めが必要なんです。

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並べてみると

現地での立場

短期留学
歓迎されるお客さん

正規留学
学校と地域の一員

求められるもの

短期留学
経験すること(成績は基本的に求められない)

正規留学
単位を取って卒業すること

英語

短期留学
伸ばす「きっかけ」をつかむ

正規留学
英語で学ぶのが当たり前。伸びるのは結果

合わないとき

短期留学
期間が終われば帰ってこられる

正規留学
簡単には逃げられない。自分で関係を作り直す

日本の学校

短期留学
籍を置いたまま行けることが多い

正規留学
現地の学校に籍を移す

持ち帰るもの

短期留学
「もっと学びたい」というスイッチ

正規留学
どこでもやっていけるという自信と、海外の高校の卒業資格

どちらが優れているという話ではありません。

そもそも、向き合う「壁」の大きさが違うんです。

受験や将来で見られるのは、留学の「長さ」ではない

「短期だと、受験や就職でアピールできないのでは?」と心配される方もいます。

でも、総合型選抜のような入試でも、就職でも、見られているのは留学先の学校のレベルや期間の長さではありません。

その経験を通して「何を感じ、そこからどう動いたか」です。

「楽しかった」「いい経験になった」で終わってしまえば、正規留学でも評価にはつながりにくい。

逆に、短期留学でも、そこで気づいたことを帰国後の行動にどうつなげたかを自分の言葉で語れれば、しっかり評価されます。

長さよりも、「その経験を自分の言葉にできるか」なんですね。

「とりあえず」で選ばないために、親子で話してほしいこと

では、うちの子にはどちらが合うのか。

答えは、お子さんの今の気持ちと、これから何をしたいかによって変わります。

日本の部活や大学受験の道をしっかり守りたい、英語にまだ自信がない、という場合は、まず短期で世界への扉を開くのは、とても良い選択です。

一方で、「日本の枠の外で、自分を試してみたい」「海外の高校を卒業して、その先の道を広げたい」という気持ちがあるなら、短期で「雰囲気を掴む」だけでは、手に入らないものがあります。

だから、答えを先に言わずに、こう聞いてみてください。

今回の留学で、何を持って帰ってきたい?

「楽しい思い出」でも、「英語をもっと頑張るきっかけ」でもいいんです。

その答えが、短期と正規、どちらの形が合うかを教えてくれます。

「短期のあとで、正規留学」という道もある

中学生のうちに短期留学をして、帰国してから、あらためて現地の高校への正規留学を目指す子も少なくありません。

一度海外を経験していると、留学へのハードルがぐっと下がるからです。

短期は、ゴールではなく入り口にもなります。

大切なのは、「次にどの波に向かうか」を、本人が自分で選ぶことです。

あわせて読みたい

期間ごとの違い(1か月・3か月・半年・1年)と費用の目安は、こちらにまとめています。

まとめ:「長さ」ではなく、「何を持ち帰りたいか」で選ぶ

  • 短期と正規は、長さではなく「現地での立場」が違う、別の種類の経験
  • 短期は「お客さん」として体験する場所。学びに向かうスイッチが入る
  • 数週間で英語力そのものはほとんど伸びない。日本人同士で固まる落とし穴もある
  • 正規留学は単位を取って卒業する場所。「我慢すればいい」が通じない分、自信が深く残る
  • 受験や将来で見られるのは、長さではなく「何を感じ、どう動いたか」
  • 「今回の留学で、何を持って帰ってきたい?」と、親子で話してから選ぶ

僕はこれまで8年間、5,000人を超える中高生と親御さんの相談に向き合ってきました。

短期を選んだご家族も、正規留学を選んだご家族も、考えた末に今は行かないと決めたご家族も、どちらも応援してきました。

「何が何でも長期留学しましょう!」などとは、微塵も思っていません(笑)

ただ、違いを知らないまま「とりあえず」で選ぶのは、もったいない。

「うちの子には、どっちが合うんだろう?」と迷ったら、一人で抱え込まずに相談してください。

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